糖尿病内科 糖尿病治療 糖尿病のある人のための糖尿病専門外来が始まりましたのでご利用ください。平均して月1回外来を受診していただき、血糖などの血液検査や尿検査を行います。その結果に基づいて、より良い血糖値、血圧、脂質になるように生活習慣改善のアドバイスや治療薬の調整を行います。具体的には、日本糖尿病学会(糖尿病66(10), 2023)やアメリカ糖尿病学会(Diabetes Care 47: Supple 1, 2024)の治療指針を参考に、以下に述べるような方針のもとに治療しています。 糖尿病治療の目標 糖尿病治療の目標は糖尿病のない人と変わらない寿命とQOL(生活の質)の確保です。すなわち健康で長生きすることです(図1)。 図1 糖尿病の治療 糖尿病治療で大切なこと 糖尿病を放置すると図2のような様々な合併症や併存症が発症し、QOLを低下させ健康寿命を縮めます。これらの合併症や併存症を予防し、進行を阻止することが健康で長生きにつながります。合併症の発症は高血糖にさらされた期間に比例するので、下記のことが大切です。・糖尿病発症の早期から治療開始すること・出来るだけ良い血糖値を長期間維持すること・適正体重を維持すること(食べ過ぎて太ると血糖が悪化します)・血圧、脂質も良好に保つこと・禁煙すること(喫煙が合併症を悪化させます)・途中で治療を止めないこと(治療を中断すると血糖が悪化し、合併症が進行します) 図2 糖尿病の合併症と併存症 血糖コントロールの目標 糖尿病合併症の予防、伸展防止のためには高い血糖値を低下させ正常に近づけることが重要です。HbA1c(エッチビーエイワンシー)は長期間の平均血糖値の目安です。合併症予防のためのHbA1cの目標値は7%未満です(図3)。低いほど予防効果が大きいですが、治療薬によっては低血糖の危険がありますので調整します。 図3 血糖コントロールの目標 血糖値、HbA1cを良くするための治療法 糖尿病の種類や状態によって治療方法が異なります。 1型糖尿病 日本では通院中の糖尿病患者さんの数%が1型糖尿病です。血糖を下げるホルモンのインスリンを作る膵臓のβ(ベータ)細胞が自己免疫異常によって破壊された結果、発症します。インスリンが絶対的に不足しているので、典型的な例では、血糖値(正常な空腹時血糖値は70〜110 mg/dL)が異常に高くなり、口喝、多飲、多尿、体重減少で気付きます。放置するとケトアシドーシス昏睡になり生命に関わります。 直ちに注射によるインスリンの補充が必要です。通常、持効型インスリン1日1回と超速効型インスリン食前3回の注射をします。 最近は24時間連続的に血糖を測定できる持続血糖測定装置(CGM)やコンピュータ制御のインスリン注入ポンプが使えるようになり、血糖マネジメントが改善しています。 血糖値、HbA1cを良くするための治療法 2型糖尿病 2型糖尿病は日本において糖尿病の約95%をしめる最も多い型です。初期には高血糖の程度が軽く無症状ですが、この間にも合併症(図2)はジワジワと進行します。2型糖尿病ではインスリンの分泌低下(分泌不全)とインスリン作用の低下(インスリン抵抗性)によって血糖が上昇します(図4)。インスリン分泌不全には遺伝的な体質が、インスリン抵抗性には肥満などの環境因子が関係します。この他に個々の患者さんによって異なる多様な病態が関与して血糖が上昇しています。 図4 2型糖尿病の成因と病態 現在、表1に示す10種類の薬が使われていますが、インスリン分泌不全とインスリン抵抗性の程度など、患者さんの病態に合った適切な薬剤を選びます。インスリン分泌不全とインスリン抵抗性の判定には空腹時の血糖と血中インスリン濃度の測定や肥満度が参考になります。(1)肥満の2型糖尿病肥満者(BMI 25以上)ではインスリン抵抗性が強いため血糖が上昇していますので、食事・運動療法による体重の減量によって血糖は下がります。発症後間もないときはインスリン分泌が保たれているので減量のみで血糖が正常化することが多いです。食事・運動療法のみでうまくいかないときは、表1にあるインスリン分泌非促進系の薬剤を単独または併用で使用します。体重を減らしやすいGLP-1受容体作動薬も効果があります。(2)非肥満の糖尿病太っていない(BMI 25未満)糖尿病ではインスリン分泌不全が優位ですので、表1のインスリン分泌促進系の薬が効きます。単独で効果がないときはインスリン分泌非促進系の薬と併用もします。(3)経口糖尿病薬で血糖が改善しないとき食事・運動療法と各種経口血糖降下薬(飲み薬)(表1)の併用でも血糖が下がらないときは、インスリン不足が考えられますのでインスリン注射が使用されます。やせ型や罹病期間が長い2型糖尿病ではインスリン分泌が低下していることが多いので、インスリン注射が必要となります。 表1 2型糖尿病の血糖降下薬 合併症や併存症を発症した糖尿病の治療 (1)糖尿病性腎臓病にはSGLT2阻害薬を優先的に使用します。(2)心不全を合併しているときもSGLT2阻害薬が有効です。(3)心筋梗塞や脳梗塞などの既往者や動脈硬化の危険因子が多い患者さんにはGLP-1受容体作動薬が使われます。(4)高度の肥満の方には体重減量効果の大きいGLP-1受容体作動薬やジルゼパチドが推奨されます。 高齢者糖尿病の治療 日本は世界有数の長寿国ですが、高齢化に伴い糖尿病患者さんの70%以上が高齢者です。高齢者ではサルコペニア(筋肉減少)、フレイル(虚弱)、認知症、悪性腫瘍が増えてきます(図1)。サルコペニアやフレイル予防には蛋白質をしっかり食べて、運動することが大切です。認知症予防には血糖、血圧、脂質をできるだけ良い状態に保ち、禁煙、運動など良い生活習慣が重要です。悪性腫瘍対策には定期検診による早期発見と早期治療が大切です。糖尿病外来ではこれらも定期チェックしながら治療します。 チーム医療 糖尿病治療は患者さん一人では大変です。医師、薬剤師、看護師、栄養士、理学療法士、ソウシャルワーカーなどの協力のもとにチームワークで患者さんを支えて治療しています。ご安心下さい。